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2008年12月 5日 (金)

☆第1章 Boy Meets Girl☆  第17話

 
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花火をして、全てを誤魔化すための必死の戯れ合いを続け、
手も足もすっかり冷たくなって、
やっと時間を気にしたらもう1時を過ぎていた。
 
タカキはさすがにご立腹。
それはそうね。
あさってから入院って予定の妻が、堂々午前様。
 
でもまぁ、「なにやってんのよ。」と軽く怒られる程度の話なのだけど。
叱り付けた私がヘソ曲げて、入院バックれなんていう
展開を恐れているのでしょう。
 
幸せと、その幸せが誤魔化しでしか続かないことを実感してしまった今日、
お気楽な恋心だけを抱きしめて眠るなんてできやしない。
 
手術して、女性ホルモンが正常に戻ったら、
こんな熱に浮かされたような感情からは開放されるの?
もしかして突然どうでもよくなったりしないかな?
 
淡い期待。
 
でもそうなったらそうなったで、迷惑すぎる話ではあるけれど。
でも今現在、すでに私はあの人にとって迷惑すぎる存在ではあるけれど。
 
 
.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜
 
 
とりあえず、休み前、最後の出勤。
 
引き継ぎは一通り目処がついたので、そんなに切羽詰った感じもない。
 
成田さんの日記はダービーネタ。
今週になってから、ほぼ連日ダービーに関するお話ね。
 
ダービー出馬表発表の話が中心の短い日記。
最後に一行、
 
「今週の僕の頭はダービーと、
月末にむけての売り上げのことでいっぱいです。」
 
ダービーと売り上げだけなんだ・・・
 
こんなパブリックなところで当たり前なんだけど、
ちょっとつまらなかったりしてると、その瞬間メール着信。
 
 
From: 成田
Subject: ホントは
さちのことで頭がいっぱいなんだ。どうしよう( ̄□ ̄;)!!
 
 
えーっ?どうして?なんでわかったの?
とびっくりして「なんでなんで?」とメールを返すとすぐ返信。
 
 
From: 成田
Subject: Re:ホントは
足あとが役に立つのだ\(#⌒0⌒#)/
花火の続き楽しみにしてます
 
 
足あとを張ってたわけだぁ・・・
ちょっと悔しい。してやられちゃった。
 
それにしても、昨日あんなに無理やり荒技で誤魔化しただけなのに
何も変わらないメール。ほら、花火の続きって。
 
でもきっとこれもあれも、みんな成田さんの信念や思考回路に関係なく、
流行り病にうなされたように出てくる言葉?
私はいつまで誤魔化し続けるんだろう?
 
でも幸せ。
さちって、今日から「さん」が付いてない。
 
 
。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜
 
 
その日は、あまり仕事も無く、1日細々した雑務をこなすだけで
あとはミクシィや友達とのメールで費やした。
 
数日前から、ちょっとした相談に乗っている男友達がいる。
同い年のノム君。独身。
 
ノム君とは、2,3年前に、スポーツクラブで知り合った。
それからも、友達同士の集まりでは顔を合わしたり、
今はミクシィで絡んだり。
 
ジムトレーニングが趣味の、真面目なサラリーマンのノム君は
今年の3月頃、ちょっとしたイベントに連れていった
私の友達ミナちゃんを非常に気に入ったらしい。
ミナちゃんは、前の職場の友達で、こちらも家庭的な雰囲気漂う、
真面目で優しい女の子。
 
こんな似たもの同士のような2人が顔を合わせ、
必然とも思えるけれど、お互いがお互いを結構気に入ったのだ。
で、お互い年も年なわけだし(ミナちゃんも同じく私とタメ)、
何の障害もない。
トントン拍子にうまく進んでいくと私も含めて誰もが思っていたんだけど・・・
 
真面目で人当たりの良い2人、そんな人たちが今まで
×さえ付かずに独身でフリーだったのにはそれなりの理由がある。
つまりは2人とも真面目すぎるのね。ほとんど異性経験無し。
 
言うならば、恋愛年齢中学生?
 
そんな稀有な2人が、35歳にしてこの東京で出会い、恋をしたわけだから、
これちょっと厄介。
 
ノム君は毎日のように私にメールしてきては、
「ミナちゃんは俺のことを嫌ってると思うよ・・・」
などと根拠の無い妄想じみた悩みを相談してくる。
 
ミナちゃんはミナちゃんで
「私、しつこくメールして、ノムさんにストーカーとか思われてます。」
なに言ってんだか・・・
 
そんな2人も、メールや電話で愛(ってとこまでまだいってないか)を育み、
なんとか再来週デートの約束をするところまで漕ぎ着けた。
「どこに行ったらいいだろうか?」
それでも依然、そんなくだらいない相談してくるノム君を
「病院入ると暇だから、考えておいてあげるからちょっと落ち着け」
となだめておいた。
 
どいつもこいつも中学生。
どうなっちゃってるの?
 
 
「幸乃が入院する前に、俺の作ったCDをやるから。」
 
神谷君から電話がきた。夕方。
わっけわかんない。お手製CD?ここにもお子さん一人。
中学生化が大流行中。
 
中学生の時、付き合ってた男の子(まりこいわく犬)に、
「俺のオススメの曲を集めたんだ。」って
プレゼントされたテープは120分が5本!
 
ほとんど洋楽のへヴィメタルが中心だったような覚えがある。
中学生の怖いところは、あげるほうじゃなく、
またそれを真剣に聞きこんじゃう貰った方。
 
そのテープは私の構成物質の一部となり、
気が付けば10代から20代をヘヴィメタ、ハードロックしか聴かない
なんとも可愛げのない少女時代を築き上げた。
 
いらないって言ったのに、神谷君は、
じゃあ幸乃の家のポストに入れにいくからって、
そんなものポストに入れられたらかなわない。
 
仕方なく、会社の帰りにまたあのマックの前で待ち合わせした。
 
さすがに今日はそうそう遅くなれないからと、
手近なファミレスでお茶をして、ちょっとだっけおしゃべり。
 
今となっては、別のことで頭が一杯な私は
神谷君にたいする変な構えもわだかまりもない。
むしろ気楽にこうしてくだらない話をしていられることが楽しくて。
 
人間あんな濃度と粘度の高い時間を過ごしてた同士でも、
時間の経過でこうやって長年の友達のように話ができるものなのね、
と変に関心したり。
 
ただ、異変があったとすれば、何気なく私が口にしてしまった
「好きな人いるんだ。」
の一言に予想以上の過剰反応示した神谷君。
 
どこのどいつだ?どういう関係?
とどのつまり、「やったかやらないか」に意識が集中。
 
この人はこういう人だから。
もう私とは絶対特別な関係にはなれないって分かってるし決めてるくせに
他の人に(ダンナ以外の)関心が行くのは許せないらしい。
全くもって子供。
というよりも、世の中に大人なんているんだろうか?という気すらしてくる。
 
大人みたいな顔をして、
みんな蓋を開ければ中学生から変わらない恋愛知能指数。
うまく隠しているか隠せていないかだけでね。
 
「そんなヤツ止めとけって。幸乃が相手にする男じゃないだろ?」
 
個人的感情丸出しで不機嫌な神谷君。
自分なら私が相手にする男だと思っているところが素晴らしい。
 
「ちゃんとCD聞けよ!お見舞い行けたら行くな!」
送ってくれた神谷君は、思いっ切り上から口調で言って去った。
 
中学生にタイムスリップしたような不思議な1日が終わった。
 
明日から、病院。
 
 
 
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