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2008年12月 5日 (金)

☆第1章 Boy Meets Girl☆  第10話

 
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Subject: 捜索願い
To: 成田
亀を探しています。
ただの亀じゃなくて
「活発な亀」
成田さんのところ亀いますか?活発な亀がいたら教えてください
 
昨日の粗相のことは早くなかったことにしたかった。
だから朝一、亀のことを聞いてみた。
お友達でいてください。
それを実践するために。
すぐに長い返信がきた。
 
From: 成田
Subject: Re:捜索願い
亀に関しては、東京都の条例がかわったんです。
販売するときにお客様の住所・氏名・連絡先などを記入してもらい、
店で五年間保存が原則です。
野外に放つ飼育者が多く、在来種の保護が目的です。
30年くらい生きますが、最後まで面倒を見て下さい!
ということなのでしょう。
僕の店では… 子供が500円玉握りしめてミドリガメを買いに来ていましたが、
まさか子供たちに住所書け、ともいえませんので、通常取り扱いをしなくなりました。
本当の名前や住所を書くとは限らないのに、なんて血の通わない法令でしょう。
もちろん取り寄せることはできます。
陸ガメですか?水棲ガメですか?
 
その後、返事を送る間もなく、立て続けに陸ガメと水棲ガメの写真が到着。
亀ネタ、食いつきよすぎ・・・
 
 
Subject: Re:捜索願い
To: 成田
ありがとうございます。亀けっこう種類あるんですね。
すぐに飼いたいってわけじゃないんですけど7月くらい。
一番大きくて20cmくらいならいいかな?
とにかくトッププライオリティは活発なの!
 
 
あまりの反応に面食らう。
成田さんは本当に心から魚や亀を愛しているんだ。
すぐにでも亀を仕入れそうな勢いだったので、一旦落ち着かせる。
だって妹が引越すのは夏の予定だから。
 
その後も数通続けて亀に関するメールが来て、結局最後は
 
From: 成田
Subject: Re:捜索願い
亀のコンディションを良好に保つには、
設備が占める割合が大きいんです。
明日亀の本もって出かけます。
 
 
で終わった。
 
 
あーあ、明日、せっかく3人で飲むのに
成田さんが亀の話して止まらなかったら
まりこは何事かと思うよね・・・
 
思わぬ食いつきにより、昨日の気まずさはすっかり消えた。
明日は普通の顔して飲みに行って、楽しんでこれる。
そう自信もついた。
 
成田さんは夜にもメールをくれた。
また亀のネタ?とうんざりしながら開いた。
 
From: 成田
Subject: お疲れ様です。
さちさんまだ仕事中ですか?
僕は定休日で出かけていて今帰ってきました。
 
 
何が言いたいのかわからないメール。
 
「仕事しています。明日は楽しみです」
おざなりにそう返信した。
 
これでいいんだ。
 
 
☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜
 
 
よくわからないメンツの飲み会。
 
開催場所はまりこの行きつけの居酒屋。
もちろん地元。
成田さんがお店を閉めて来るまで、まりこと駅前の喫茶店で先に落ち合った。
 
経緯を話したほうがいいのか迷ったけれど
それこそ中学生じゃあるまいし、
告白したけどフラれちゃったじゃシャレにもならない。
考えてみれば別に語る程の経緯もない。
そうよね、結局一人で盛り上がってただけだし・・・
 
まりこはさかんに私の病気のことを気にして、
2人でいた30分間くらいはその話に終始した。
 
「あっ、あれ、そうだ。」
駅の改札口が見える方に座ってたまりこが成田さんを見つけたらしく、
バッグを掴んで出ていく。
私はのろのろとバッグに煙草やハンカチしまいながらゆっくり後を追う。
 
そりゃ、それなりに気まずい。挙動不審になったらどうしよう?とか。
 
ジャケット羽織って表に出ると、まりこと成田さんが向かい合っていた。
目が合うと、「こんばんは、さちさん」って丁寧な挨拶といつもの笑顔。
「こんばんは」笑顔を作るけれど多分口元痙攣した。
なんでこの人はこんなに屈託なく、と少々腹が立つ。
 
目当てのお店までは駅から少し歩いた。
歩いてる間はずっとまりこにだけ話しかけていた。
 
なんだかこういうこと、20年前にも会った気がする。
好きだった男の子と帰り道が一緒になって、まりこと3人。
でも目も合わせられなくてずっとまりこに話しかけてる私。
気がついたら彼はどっか行っちゃってた・・・
さすがに成田さんはどっか行っちゃうわけもなく、
ニコニコと私達の話を聞いていた。
 
お店に入り、飲み物をオーダーして一息つくと成田さんが
「そうだ、さちさん」
とおもむろに話しかけてきた。
 
必死に無視してたのに名指しで話しかけられて逃げようもなく
おどおどと目を合わせると、胸ポケットから丸めた冊子を取り出す。
「これ、亀の飼育方法の冊子。」
あぁ、本当に持ってきてくれたんだ。
「ありがとうございます。」
慇懃無礼に言って受け取る。
 
「なに?亀飼うの?」
まりこがびっくりして入ってくる。
「うん。妹がね・・・」
 
そこで丁度お酒が来て乾杯。
 
「なんだかよくわかんない集まりだけど、とりあえず乾杯!」
まりこがグラスを合わせながら言う。
 
ホントによくわかんない。
 
お酒が入り、顔を突き合わせて3人になれば
そうそう無視してもいられない。
じょじょにだけど意外なくらい普通になってくる。
 
だけど何も知らないまりこが爆弾落としまくりなのには閉口。
「でもさぁ、さちはいい旦那さん見つけたよねー。
 普通結婚したらこんな時間に飲みに行ったりできないょー」
 
あちゃー・・・どういう話題よ?
と思いつつ逃げも隠れもできないのだから
「そう?」
と自然に流してみる。流してるのに、
どこで知り合ったの?とか、
どこがよかったの?とか、質問の嵐。
開き直って素直に答える。まぁ別に今さら秘密でもなんでもないし。
 
さんざん質問した挙句、
「私は結婚なんて絶対無理!成田君結婚しないの?」
と唐突に矛先を替え、
「いるんでしょ?彼女?」
とダメ押し。
 
成田さんはちょっと困った顔をしたように見えたけど
「いるよ。」
とあっさり答えた。
 
実は薄々知ってたんだ。
火曜日の定休日の夜にたまに上がる映画の感想系日記。
たいていがラブストーリー。
一人じゃいかないでしょう、と。
彼女いるんだろうな、と。
まぁ私にしてみればだから何?という感じだったんだけど。
いざ本人の口から明言されてもやっぱりだから何?という感じだし。
 
私は私のことを見ている成田さんにしか興味がない。
それ以外のプライベートなことはどうでもいい。
 
これも私の欠落?
 
「相手はいくつ?若いの?」
「2つ下・・・だな。」
「じゃあ結婚したがるでしょ?」
 
しばらくやっぱり困った笑い顔で考えた後
 
「うん。したがるね。したいって言われた。」
 
「じゃあするんだ?結婚?」
「どうだろうなー?」
 
結婚したら、対等だから、私と遊んでくれるかな?くれないだろうな。
そんなことを酔いかけた頭で考える。
 
そこから先は加速を付けるように酔っ払い街道まっしぐら。
なんだか取りとめの無いことを語っていた気がする。
 
ひとつだけ覚えている。
 
なぜだか競馬の話になって、私がイクノディクタスについて語った。
ノリノリで大演説。
 
 
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